研究計画

研究の背景・目的

本研究の目的は、日本の金融仲介機能を長期的・定量的に把握できるデータベースを構築し、歴史的な視点を交えた実証分析を行うことである。第一に、様々なソースから第二次世界大戦後の日本の金融データを収集し、Philippon (2015)の金融仲介コスト指標と、Berger and Bouwman (2009)の流動性創出指標(LCM: liquidity creation measure)を計測する。第二に、日本の金融仲介コスト、LCMに関する実証分析を行う。具体的には、金融仲介サービスの高度化、金融規制の変化、経済成長率・名目金利水準や金融政策の変化が金融仲介コスト、LCMに及ぼす影響を分析する。また、銀行レベルのパネルデータに基づき、LCMと銀行の健全性・リスクテイキング、実体経済との関連について分析する。日本の金融仲介コスト、LCMを計測・分析した先行研究は存在せず、本研究は、日本の金融仲介機能の長期的変遷を定量的に捉えることで、有益な知見を提供することを目指す。

研究計画

本研究は、(1)データベース構築と金融仲介コスト・LCMの計測、(2)金融仲介コスト・LCMに関する実証研究、の二つに大別される。

(1) データベース構築と金融仲介コスト・LCMの計測

金融仲介コスト、LCMは以下の式で定義される。

金融仲介コスト\(=\frac y q(1)\)

\(LCM=\displaystyle \sum_i w_iAssets_i+\displaystyle \sum_i w_jAssets_j(2)\)

(1)式にて、yは金融業所得、qは金融機関から非金融部門への金融仲介サービス額である。
(2)式にて、\(Assets_i\)は銀行資産項目iの保有額、\(w_i\)はその流動性に基づくウェイト、\(Liabilities_j\)は銀行負債項目jの保有額、\(w_j\)はその流動性に基づくウェイトである。

金融仲介コスト・LCMを計測するため、多種多様なソースからデータを収集し、定義を確認しながら加工・結合し、データベースを構築する。具体的には以下の統計資料を収集してデータベースと指標を構築する予定である。第一に、金融仲介コストの分子である金融業所得yは、国民経済計算の金融・保険業GDPによって把握できる。ただし、日本の金融・保険業GDPには、同一基準での長期時系列データが存在しないことや、金融・保険業の内訳が公表されていないためどの業態が金融業の成長を牽引したかが分からない問題がある。これらに対処するため、預金取扱金融機関、証券会社、保険会社の財務諸表を収集し、独自に金融業所得の長期推計を行う。財務諸表の出所は、主に、各業界団体が公表している統計資料、財務省・大蔵省の統計資料、個別金融機関のディスクロージャー資料である。第二に、金融仲介コストの分母である金融仲介サービス額qとして、本研究では負債及び株式を通じた資金供給、流動性供給、投資銀行業務(社債・株式発行の引受・販売、M&A仲介等)、保険を考える。これらは、資金循環統計、マネーサプライ統計、日本証券業協会資料、レコフなどから把握する予定である。第三に、LCMについては、上述した金融機関の財務諸表から把握できる。ただし、貸出や預金の流動性((2)式のウェイトw)は満期や資金使途によって異なるため、日本銀行『経済統計年報』等から補完的な情報を得る。

(2)金融仲介コスト・LCMに関する実証研究

金融仲介コスト・LCMに関する実証研究については、以下の分析を行う予定である。

第一に、金融サービスの高度化、金融規制の変化、経済成長率・名目金利水準や金融政策の変化が金融仲介コスト、LCMに及ぼす影響を検証する。第二に、銀行レベルのミクロデータを用いて、LCMが銀行行動や実体経済とどのように関連するかを検証する。

参考文献

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