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聴講メモ: Climate Policies in Supply Chains

Climate Policies in Supply Chains“ 

U of St AndrewsのFinanceセミナー。customer企業が気候変動対応(温室効果ガス排出量の削減)目標を掲げると、supplier企業の気候変動対応の指針(policy)と結果(outcome)がどう変化するかを、北米企業を対象に実証した論文。主要な結論は以下:
・customer企業が気候変動対応目標を掲げると、顧客からの圧力によってsupplier企業も気候変動対応policyを採択する確率が高まる。ただし、supplier企業の温室効果ガス排出量、エネルギー費用、気候変動対応のための設備投資・R&Dといったoutcomeには影響がない(policy-output gap, Greenwashing)
・Policy-output gapが低下するのは、supplier企業の粗利率が高い(=対応する余裕がある)場合、customer企業がsupplier企業をより監視している場合

データはbilateralなcustomer-supplier単位のもの(supplier1社当たり平均11社のcustomer企業があるとのこと)。supply chainデータを使った分析はこれまで何度か見聞きしたことがあるが、ESG関連は初めてだった。気候変動対応に熱心なcustomerとsupplierが内生的に取引関係を結んでいるため両者の間にみせかけの相関が生じているのではないかという疑問に対してsupplier-customer fixed effectで対応したり、customer企業の気候変動対応の内生性にIVで対処したり、手堅い分析内容だった。分析方法の仮定についても丁寧に説明し、教育効果の高いプレゼンだった。

ちなみにUoSCではセミナーは完全に対面に戻っていたが、St Andrewsではハイブリッドが続いている。先週は半々ぐらいだったが、今日はオンラインの参加者が多かった。やや寂しい気もするが、対面で参加している大学院生は質問しやすいかもしれない。学生に交じって、私もそのメリットを享受できた。

Last update: 2023.05.19

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