Blog

HOME > Blog >

聴講メモ: Decentralized banking in mortgage market

Decentralized banking in mortgage market: Evidence from branch manager’s past experience“ 

UoSCのFinanceセミナー。銀行支店長自身の過去の経験が、その支店の住宅ローンの金利、融資可否に影響しているかをアメリカのデータを用いて実証した論文。結論はYES。たとえば支店長が過去に実行した貸出金利の平均値が現在勤めている支店の過去3年間の金利よりも高い(低い)場合、その支店のその後の金利は高く(低く)なる。融資拒絶率も同様。

背景となるliteratureとして、銀行組織内における裁量的意思決定(Aghion and Tirole 1997, Stein 2002など)や、専門家の意思決定における経験バイアス(Malmendier et al. 2017など)を挙げていた。銀行融資におけるソフト情報の重要性、組織内における権限委譲とコントロールについては多くの先行研究があるが、それを経験バイアスに関する最近の研究と結びつけて検証している点がsales pointのようだ。Berger and Udell (2004)のinstitutional memory hypothesisと似ていると思ったが、銀行レベルではなく個人レベルのmemoryを検証している点が新しい点かもしれない。

なお、支店長の過去の経験はRevelio LabsというHR database、融資データはHMDA, CoreLogicの融資レベルのデータを使っていた。HR databaseは探せば日本にもある気がするが、融資レベルのデータはなかなかない。アメリカでもヨーロッパでもbankingの実証は融資レベルのデータを使うことが標準となりつつある。Data gapにどう対処すればよいのか、悩ましい。

いつものことだが、アメリカと日本の違いも感じた。日本だと、住宅ローンは本店が一律に決めており裁量の余地はないように思う(あるいはあるのだろうか?なお、セミナー中、分析の対象外だがオンラインのモーゲージ・レンダーは裁量が一切ないとの議論はあった)。また、支店長が現在の支店に勤める前の職歴は、「同一地域(county)内の他銀行」が72%と最も多く、次いで「他地域の他銀行」が25%。日本で最も一般的と思われる「他地域の同一銀行(銀行内での異動)」は2%に過ぎない。情報生産は、銀行という組織が行うというよりも、banker個人が行っているのだろう。

Last update: 2023.02.10

pagetop