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雑感:アメリカ決済事情

アメリカで生活するのはほぼ四半世紀ぶりだが、この間、アメリカの決済事情は大きく変化したようだ。以下、遠い記憶をたどりながら、印象に残ったこと。

(1)小切手
前回滞米時は、アメリカが小切手社会であることを様々な場面で実感した。スーパーマーケットのレジでは小切手で支払いをする人が多くいたし、自宅に送られてくる公共料金やクレジットカードの請求書の支払いも、小切手を郵送していた。日本では銀行口座からの自動引き落としが通例なので、最初は戸惑って周囲の人に聞いたところ、「請求内容が間違っていることも多いので、自動引き落としが普及していないのではないか」とのことであった。

しかし、今回は小切手をほとんど目にしていない。近くの銀行で当座預金口座を開設したが、紙の小切手帳が欲しければ手数料を支払って注文せよとのこと。小切手帳の代わりに渡されたのはキャッシュカード兼用のデビットカード。請求間違いの件数が25年前よりも劇的に減ったようには思えないが、当時の隣人の説明が間違っていたのか、あるいは自動引き落としの利便性がアメリカでも認識されるようになったのかは分からない。

(2)銀行振込
日常生活はデビットカードで足りるが、利用限度額があるため、車の購入には難儀した。銀行のコールセンターに電話し、利用限度額を一時的に引き上げてほしいと依頼したが、システム上対応できないとのこと。仕方がないので、昔ながらの銀行発行小切手(casher’s check)を作りに銀行に出向こうかという話になりかけたが、試しに車のディーラーの端末で、ePayという支払い用のオンライン・ポータルに銀行口座情報等を入力したところ、無事、完了した。利用限度額を超える支払いがなぜできたかは不明だが、ディーラーの話では、こういうことは時々あるとのこと。

公共料金や請求書への支払いがオンラインでできるようになったのも、前回との違い。当時もオンラインバンキングは既にあったが、残高や入出金履歴の確認が主な用途だった。現在はBill Payと呼ばれるオンライン送金の仕組みがあり、支払先や請求書番号等を銀行のウェブサイトで入力すると、自分の銀行口座から支払われる。

ただし、オンラインでの支払いから決済が完了するまでは、時間がかかる。Bill Payの場合、銀行振込が行われていると思われるが、決済が完了するまで数日、長いときには10日前後かかった。また、電子支払いに対応できない個人などへの支払いは小切手を郵送すると注記されている。Bill Payで二重に引き落とされたことが一度あったが、返金は小切手が郵送されてきた。銀行振込については、日本の銀行の方が、まだ一日の長がある印象。

(3)利便性
国際決済銀行のThe Red Book Statisticsによれば、アメリカの小口支払い手段のうち、2020年時点でもっとも取引件数が多いのはデビットカード(シェア46%)、次いでクレジットカード(同26%)であり、小切手のシェアは6%。なお、電子マネーのシェアは4%とさらに低く、大学内でスマホで支払いをしている学生を見かけることもあまりない。定義が異なるため厳密な比較はできないが、1995年時点では、小切手のシェアが76%と圧倒的に高かったから、四半世紀の間に劇的にペーパーレス化が進んだことになる。

小切手の消滅により、店頭での待ち時間は昔よりも確実に短くなった。ただ、それで利便性が高まったかというと、あまりその実感もない(年をとったせいか?)。むしろ、自分の好きなデザインの小切手帳を選べなくなったのがやや寂しい気がしないでもないのだが、これは単なる懐古趣味だろう。

 

Last update: 2022.08.29

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