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聴講メモ: Cultural roots of entrepreneurship
“Cultural roots of entrepreneurship: Evidence from second-generation immigrants” (古いバージョンはこれらしい)
UoSCのInternational Businessセミナーに初参加。国の文化が起業に影響することを示した実証論文。起業に影響するマクロ要因は文化以外にも多くあるので識別が難しいが、この論文では、アメリカおよびヨーロッパへの「移民第2世代(自分はアメリカ/ヨーロッパで生まれ育ったが親が母国からアメリカ/ヨーロッパに移住)」の個人データを使い、親の母国の起業文化(変数は起業率の長期平均値)の違いが第2世代の起業に影響するかを検証している。
Mokyr (2018)、JFEのcorporate cultureに関する特集号、Song and Thakor (2019)などに触発されて「文化」に関心を持っていることや、起業に関するWPを書いたこと、文化も起業もinterdisciplinaryな領域でありIntertnational Businessにうってつけの題材であることから、興味深く聴講した。ちなみに著者(私とほぼ同世代と思われる)は経済学部出身だが、大学院生時代に「文化」は経済学にとってタブーだったため、社会学の文献を読んで勉強したそうだ。JFE (2015)特集号のZingalesの巻頭言で、”When I was a doctoral student at MIT between 1988 and 1992, the word “culture” was never spoken in any of the classes I took.”と書かれていたことを思い出した。
理論として参照する文献やtechnical jargonは経済学以外のものも多かったが、分析方法は経済学の実証論文とあまり変わらない印象をもった。固定効果を多用し、robustness checksを多く行っている点も共通している。最近あるjournalからconditional acceptanceをもらったが、一番苦労したのは、海外に移住する親世代のselection biasによって推定に歪みが生じているとの批判への対処だった由。移民の起業率が高いことは知られているが、母国における起業率と移民の起業率との差が、起業が活発な国と不活発な国のどちらで大きいかによって、推定の歪みの方向がupward/downwardになる。データを調べたところdownwardでconservativeな推定値なので、結論は変わらない、と反論していた。これまで、biasやidentificationにうるさいのは経済学/ファイナンスの特徴だと思っていたが、他の社会科学も似たりよったりのようだ…。
2024/5/3追記:あるjournalはOrganization Scienceだった由
Last update: 2022.10.07