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聴講メモ: Race, Glass Ceilings, and Lower Pay for Equal Work

今日から滞在先のUoSCのFinanceセミナーが始まる。第1回は大御所のLjungqvist先生。
“Race, Glass Ceilings, and Lower Pay for Equal Work”

アメリカのpatent examinersの個票パネルデータを使って、昇進や賃金における人種差別の存在を実証した論文。patent examinerの昇進や賃金は厳格にルール化されていること(ただし上級管理職を除く)を使って、たとえば黒人は観察できないスキルが劣るから昇進が遅い/給与が低いというomitted variables仮説を排除していた。直属上司の裁量は、昇進書類を上部機関にいつ申請するかだけで、昇進のチャンスは四半期ごとにある。平均的には1年で1階級昇進するが、黒人は白人に比べると約25%(1四半期)昇進が遅いとの結果。この結果は1階級ごとなので、累積の生涯賃金はかなり大きな差が生まれる。実証結果の説明仮説として、人種間でpreferenceが異なる, statistical discrimination, taste-based discriminationを検討。結論は “Our evidence is most consistent with a nuanced form of taste-based discrimination, except at the top of the career ladder, where we cannot rule out statistical discrimination.” 

Ljungqvist先生は、アメリカでpatent examinerがrandomに特許の審査を割り振られることを利用してinnovationの因果効果を実証した有名な論文をいくつか書いている:
“What Is a Patent Worth? Evidence from the U.S. Patent “Lottery””
“Quick or Broad Patents? Evidence from U.S. Startups”
本研究は、上記研究でpatent examinerの個票データを入手したことに伴うserendipity論文だ、とのこと。serendipityは優れた研究からしか生じないことを実感。

また、自分の昇進が遅れた黒人の上級管理職は黒人の部下(patent examiner)の昇進を遅らせるという結果(Black-on-Black discrimination)を、女性の昇進における“queen bee” syndrome (“women who have succeeded in male-dominated firms may act in ways that block the careers of other women.”)になぞらえていた点も興味深かった。文脈は人それぞれだと思うが、多くの人が似たような経験をしているのではないだろうか。自戒を込めて、自分はどうだっただろうかと過去を省みたが、私はそもそも管理職を経験していなかったのだった・・・。

Last update: 2022.09.02

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